砥上 裕將 「線は、僕を描く」
「渦」とほぼ同時に読み終えた、久しぶりにぐっと引き込まれた一冊。
「両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、 アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。 なぜか湖山に気にいられ、その場で内弟子にされてしまう霜介。。。。」
水墨画の世界の話でした。
巨匠・篠田湖山との出会いとか、その孫娘「千瑛」との出会いとか、そういう設定には特に目新しさとはないと思いましたが、水墨画にのめりこんでいく姿の描き方にすごく惹かれました。
読んでいるだけで、繊細な動きのかすかな音まで聞こえてくるかのようでした。
先生の一番弟子の西濱さんの存在感もよかった。
いくら技術を磨いても、それだけではたどり着けない場所。
そこにどうやって霜介は近づいていけるのか、いけないのか。
ラストも予想はつきましたが、それでもなんというか、霜介のことを思い浮かべてみるだけで、こちらまで清々しい気持ちになりました。
作品中でも書かれていましたが、水墨画の世界なんてそれこそカルチャーの世界としか思っていなかったものだから、耳の痛い話でもありましたが、すぐに影響されてしまう私は、俄然、やってみたくなったし、水墨の世界をもっと知りたい!と素直に思いました。
よかったです。
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