忍者ブログ
なんやかんや
Admin  +   Write

今村 翔吾 「じんかん」

織田信長が小姓に語る、という形で描かれた松永久秀(松永弾正)の話でした。
出会う人物がそれぞれに魅力的で面白かったです。
主となる三好元長との出会いも印象的で、そりゃこういう人についていきたくなるのも無理はないという感じ。
一方、敵対する相手として細川高国という人物がいますが、この高国が死ぬ間際に話すことに久秀は思うこともあり、元長との対比もあって、なるほどそうくるかと、短い場面でしたがとても印象的で、ここは一つのポイントかなと思いました。
最後の方まで生き残っていた弟の長頼の存在もステキでした。
いつもいつも兄のことを思いつつ、それでいて自分らしく、自分のやり方で人生を切り開いていった人物で、「長頼さまに教わった」と長頼の家来が久秀に話していたところとかも、すごくいいなと思いました。
三好三人衆とか筒井順慶とか、そんなに詳しくは書かれていないのですが何度も出てくるので、どんな人達だったんだろうなあとも。
もうちょっとこの辺知りたいなと思う部分もありましたが、そうでなくても早く読み終えないといけない長編だったので、これ以上になるとやっぱりしんどいかな。
最後の方、身の危険を顧みず駆け込んできて命果てた人物、この人物は予想通りでした。





拍手[2回]

PR
「熊嵐」以来放ったらかしでしたので、読んだ本の列挙だけでも。

中山 七里 「トクダー・デスの遺産」
寺地 はるな 「わたしの良い子」
門井 慶喜 「定価のない本」
柏井  壽 「鴨川食堂はんなり」
恩田 陸 「麦の海に沈む果実」
早見 和真 「イノセント・デイズ」

暗いのあり、どんでん返しあり、全く知らかった世界有りでいろいろでした。
恩田さんの「麦の海に沈む果実」は、どこまで読んでも、一体この先どうなるのかなーと最後の最後まで思いながら面白く読みましたが、ラストがどうもちょっと私にはあっけなかった気がしました。
どんでん返しと言えばどんでん返しなのかとも思いますが、どんでん返しと言うならやっぱり「トクダー・デスの遺産」の方が面白かったです。
「鴨川食堂はんなり」はシリーズ本みたいで、それを知らずにいきなり読みました。
勿論京都が舞台で、話は短編。
京都の人はこういう時はこう言う、みたいなエピソードもあって、なんやねん京都人って嫌やわー、などと思いながら、そんなこんなで笑えたのもありました。
「定価のない本」は面白かったです。
「わたしの良い子」は、確か新聞で紹介されていたものだったように思います。なかなかよかったです。
「イノセント・デイズ」も暗い話で、孤独感っていうのはわかるけれど、その女性の魅力そのものが私にはよく伝わってこなくて、悲しいだけの話に思えてしまいました。
暗い話は疲れます。

さて、今読んでいるのは長編です。
文庫本で4冊あるらしく、ただ今2巻目。
舞台は中国、漢字だらけで読むのが大変ですが面白いです。
古い作品です。
そんな中、図書館から次の予約本の連絡が来てしまい、受け取りに行ったらえらい分厚い上、予約殺到本らしく、これを先に読まなくていけなくなりました。
連休なので頑張って読もう。



拍手[2回]

吉村 昭 「熊嵐」


1915年(大正4年)に北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢 (現在の苫前町三渓)でヒグマが開拓民を襲った三毛別羆事件をモデルにした作品。
北海道苫前村六線沢の島川家をヒグマが襲い、2人を殺害する。ヒグマは2人の通夜の席にも現れ、さらに隣家に侵入し子供や妊婦を殺害した。警察が出動するも効果が見られず、区長は荒くれ者だが凄腕の猟師山岡銀四郎(史実では山本兵吉)に応援を頼むことにした。。。。。」


ということで、ビビりながら読みました。


ヒグマが始めに女性を襲ったことから、その味を求めて女性ばかりを狙うとか、妊婦のお腹の子どもまで襲ったとか骨をかみ砕く音とか、人間がただのエサでしかない存在に陥ってしまっている怖さはすごかったです。
いくら鉄砲があったとしても、大自然のヒグマの本当の恐ろしさの前では「烏合の衆」でしかない警察や村の人々。
その中で、恐怖に耐えながら、責任感のみで立ち向かおうとする区長の存在と、ヒグマを仕留めた猟師が、本当は物凄い恐怖と戦っていたということ。


この本は、緊急事態宣言直前に借りた唯一の本で、読み終えるとあとが無いというのもあったのはあったのですが、それプラス、怖くて少しずつしか読めなかったのも事実でした。

拍手[2回]

森 絵都 「つきのふね」

森さんご自身としては、この作品は児童書として書かれたという作品。

「あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき―。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。」

智さんというのは、さくらが万引きしてしまった時にこっそり助けてくれたスーパーの店員さんで、それを機に、何かあるとさくらは智さんのアパートに遊びに行くようになっていました。
この智さん、ちょっと「おかしな」ところがあり、話が進んでいくうちにこころの病がひどくなってしまい、話の展開にドキドキというか、ドクンドクンというか。
終盤、智さんを探して、さくらと勝田くんが廃校になった自分たちの小学校に行くあたりからずっと、智さん絡みのこの場面、夢中になって読みました。
最後に添えられた手紙に泣きそうになりました。


拍手[2回]

新庄 耕 「地面師たち」

冒頭からドキドキしました。
地面師グループが6億円をかけたプロジェクトの練習から始まり、本番へと続きます。
本番では思いもかけないところから思いもかけない質問が入り、答えられなくて一瞬冷や汗たらりとなるのですが、それでも何とか切り抜ける、そういうところにドキドキしてしまうのです。
悪いのは地面師たちの方なのに。
その後ストーリーは、次のプロジェクトへと向かっていきます。
次のプロジェクトの額は100億で、着々と計画が進められていきます。
定年間近の刑事が少しだけ絡んでおり、地面師グループの一人の拓海は驚くべき事実を知ります。
そのあたりからラストはうっすら見えるし、新たなターゲットにしたって、そんな簡単には引っかからんだろうとも思いましたが、100億の本番でもたっぷりと予想外のことが起こり、スリルを味わいました。
悪いのは地面師たちの方なのに。
作品に陰影を与えているのは、拓海がなぜ地面師として生きているか、という部分です。
もう一人、長井が少しずつ変わっていく姿にも救われた思いがしました。
ハリソン山中の狂いっぷり、超不気味でした。





拍手[2回]

中嶋 博行 「検察捜査」

「横浜の閑静な高級住宅街で、大物弁護士・西垣が惨殺された。横浜地検の美人検察官・岩崎紀美子は、捜査を進めるほど、事件の裏に大きな闇を感じる。日弁連と検察庁、警察庁そして県警の確執・・・・」
第40回江戸川乱歩賞受賞作

この作品もまた、色々知らないことがいっぱいあって勉強になりました。
大分前の作品のようですが、法曹の世界のあれこれがよくわかります。
今回の事件のカギは検察官のなり手がいないこと。
それがこんなにも厳しいことだったとは。
それにしても、どの世界においても起こる権力争いには、虚しさが溢れてしまいました。
最後に、前の作品も今回の作品も主人公は当然のようにすらっとして優秀な美人の設定でしたが、私としては、ちょっとそこら辺に不満が。
姿かたちはわかりませんが、能力の面で、どっちかというと鋭さが足りないというか甘いというか、例えば「検察捜査」では、ラスト、そこまで気が付いたんなら、もっと自分の身の危険だって察知できるんじゃないか??というような不満もあったのでした。

4月から、図書館で一部の業務が再開されました。
貸し出しもできるみたいなので、土曜日に早速行ってこようと思います。


拍手[2回]

中嶋 博行 「司法戦争」

スケールの大きな話でした。
沖縄で最高裁の判事が殺され、その判事の一般情報ファイルがアクセス不能になった。
それはなぜか?
判検交流で裁判所の調査官として働いている真樹加奈子に、検察が秘密裡に調査を命じる。
警察庁、法務省、内閣情報室などなど、元々漢字の出番の多い世界の内容である上に、アメリカの裁判の問題点とか、判事とか事務総局とか検事とか弁護士とか、もうとにかく司法関連のあちこちが抱える問題点とかが満載、話が煮詰まっていくにつれ、電子マネーがどうとかまで出てきたりして、よくわからなくって大変でしたが、それはそれとして、ラストではハラハラしながら一気に読みました。
ラスト近く、沖縄まで行った真樹加奈子を尾行していた調査員の一人が、津崎に襲われながらも何とかしようとするシーンには泣きそうになりました。
沖縄から来た2人の警察官の存在が良かったです。
重苦しい話の中の息抜きにみたいになり、ちょっとスカッとしてちょうどよかったです。

まだ図書館に行けないので、次は何を読もうかなと本箱を眺めたら、中嶋さんの作品がもう一冊あったので、それにしました。
同じような内容なので、こんがらがること間違いなし。



拍手[2回]

吉田 修一 「続 横道世之介」

「・・・・やっぱり血ってあんのかもね。この子の父親が食い意地張ってたのよ」
「そうなんだ。どんな人?」
「どんなって・・・・・・良く言って、クズ」
「悪く言えば?」
「死ね」
顔は笑っているが、目が笑っていないところを見ると、この話には深入りしない方が良いらしい。

という桜子のキャラも何とも言えない作品。

例えば、
「あっ、亮太、危ないから近づいちゃダメだぞ」
駆け寄ってきた亮太を抱き上げた隼人が、
「・・・・いいか、気をつけろよ。この白い煙を浴びたら、野良犬になっちゃうからな。ほら、世之介はもう煙を浴びたから、野良犬になっちゃってるよ」
と、また訳の分からない遊びを始める。
ただ、世之介もこの手の遊びが嫌いではないので、
「ウー、わん!わんわん!」
と、早速迫真の演技で二人を追いかけ回す。
さすがに亮太も最初は笑っていたが、世之介はいつまでも芝居をやめないし、隼人の演技もまた一切手を抜かないので、次第に本気で怖がってくる。
「やめてやめてやめて!どうやったら戻るの?ねぇ!どうやったら戻るの?」
隼人の腕の中で焦る亮太に、
「世之介の好きなものをあげれば、元に戻るかもしれない」と隼人。
「分かんない!分かんない!分かんない!」
「ちゃんと考えろ!考えないと、噛み殺されるぞ!」
「分かんない分かんない。・・・・あ、じゃ、お母さん!」
「ウ~~~~~~~ガウガウガウ!」
亮太の答えに、更に世之介が獰猛になり、
「ダメだ!もっと怒ったぞ」
と隼人が煽る。
「あ、プリン!牛乳プリン!」
「ウ~~~~~~~ガウガウガウ!」
「ダメだ。もっと違うもの!」
「じゃ、じゃあ、プチプチ!」
亮太の答えに、一瞬、世之介は首を傾げるが、
「ほら、こうやってプチプチするやつ!」
との説明に、ああ、梱包用の気泡緩衝材かと気づき、
「ウ~~~、ん?」
と一度迷い、
「ぐー、ぐるぐるぐる」と、その怒りを収めた。

というシーン。

例えば、
「おまえ、正月どうすんだよ?九州の実家に帰んのか?」
と隼人が聞いてくる。
「いやー、たぶん帰んないっすね」
「サクたちとどっか行くのか?」
「いや、別に予定ないです。隼人さんは?」
「俺は普通に寝正月」
「じゃ、俺もかな。・・・・・あ、ってことは、もう三年も正月に実家に帰らないことになるんだなー」
「それまでは帰ってたんだろ?」
「はい。学生んときは毎年。でももう、こっちの正月に慣れちゃったしな」
こっちの正月といえば聞こえはいいが、要は大晦日からコモロンと近所の居酒屋で飲み、年が明ければ、そのままのノリで近所の神社に初詣するだけである。
「世之介って、今、幾つだっけ?」
「先々月、二十五になりました」
「二十五か。ってことは、平均年齢まで生きるとしても、あと五十回しか正月ねえじゃん」
「五十回・・・・・。多くないっすか?」
「そうか?でもまあ、その辺は人生観の違いなんだな」
「というか、自分の正月をそんな風に数えられたの初めてですよ」
「普通数えるだろ?今月、休みあと何回かなーとか」
「あ、それは数えますけど」
「だったら、正月も数えろよ」
「いや、正月と今月の休みは、ちょっと違うじゃないですか」
「なんで?」
「だって、今月の休みを数えるのは、なんかこう希望に満ちてるけど、これから先の正月を数えるのって、自分の寿命を数えるみたいじゃないですか?」
「まあ、そう言われたらそうだな」

というシーン。

また、何回か描かれる、世之介と桜子のスーパーでの買い物のシーン。
そういう、何でもないシーンが、ものすごく印象に残る。

やっと読む機会に恵まれた一冊でした。













拍手[2回]

横山 秀夫 「影踏み」

双子のお話でした。
と言っても、弟はもう死んでいます。
主人公の真壁修一はノビ師(泥棒)で、両親と共に火事で死んだ双子の弟と「喋り」ながら、引っ掛かりを覚えた事に首を突っ込んでは「解決」していきます。
事件は一つで終わるのではなく、いくつかあるのですが、どの話も丁寧に描かれていて、ちょっと心あたたまる話もありました。
家の中に忍び込むシーン、そんなにうまくいくんかいな?と緊張感も味わいました。
ラストでは、弟から真実を知らされ、真壁の心の奥にずっとあった本当の気持ちが明らかになり、切なくなります。
ノビ師というのは、深夜に寝静まった民家に侵入して盗みを働く泥棒のことだそうですが、作品中には他の専門?業界?用語もたくさん出てきて、興味深かったです。


拍手[3回]

呉 勝浩 「スワン」

直木賞候補作品ですぐに借りれたのは、この本まででした。
スワンというショッピングセンターで二人組による無差別テロが起き、犯人は二人とも自殺。
その時に生き残った女子高生のいずみは、何も知らない世間からいろんなことを言われ、理不尽な目に遭います。
ある時、弁護士を通じ、事件で亡くなった人の親族が本当のことを知りたがっている、という理由による、謎の集まりに呼ばれ。。。。。
という風に続き、ラスト、驚くべきことが明らかになります。
一番初めのページにショッピングセンターの図があるので、今誰がどこにいるのかを確かめながら読んだりしましたが、ちょっと面倒くさかったです。
いずみが最後まで隠していることが分かった時の驚きは、何とも言えないものでした。
わかってしまったからこそ、強烈に心に残るそのシーン。
思い描いてみて、その衝撃がすごかったです。
その少女の背負ったものの重さ、子どもの親の、到底推し量ることのできない思いに言葉が出ませんでした。
ピストルを撃つ音、打ち終えたピストルを捨てる音、その音の響きがずっと心に残ります。



拍手[2回]

≪ 前のページ   *HOME*   次のページ ≫
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 4
5 6 7 8 9 10
12 13 14 15 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[10/05 ♪]
[05/29 snow]
[05/29 ゆみ葉]
[05/29 ゆみ葉]
[08/19 snow]
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
管理人
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
最古記事
(01/03)
(01/06)
(01/17)
(01/20)
(01/21)
アクセス解析
フリーエリア
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]