荻原 浩 「海の見える理髪店」
最近たまに、表紙の絵というのでしょうか、それがちょっとメルヘンチックだなあと思うことがあります。
この本も、とってもきれいなというか、かわいい理髪店の絵が描かれてあって、そのせいか、色々なお客さんの来る話ぐらいに思っていたのですが、短編集だったので少し驚いたというか、表題作を読み終えた時点で少し「えっ?」となってしまいました。
ですが、どれも少しずつ哀しい話で、そのさじ加減というか、そういうのが上手いなあと思いました。
荻原作品は、「母恋旅烏」以来ですが、どちらかというと「母恋旅烏」のような、もうちょっと笑える要素のある作品の方が好きかもです。
先に読まないといけない本があったのですが、「予約が殺到しています」シールが光っておりますので、こちらを優先しました。
最近たまに、表紙の絵というのでしょうか、それがちょっとメルヘンチックだなあと思うことがあります。
この本も、とってもきれいなというか、かわいい理髪店の絵が描かれてあって、そのせいか、色々なお客さんの来る話ぐらいに思っていたのですが、短編集だったので少し驚いたというか、表題作を読み終えた時点で少し「えっ?」となってしまいました。
ですが、どれも少しずつ哀しい話で、そのさじ加減というか、そういうのが上手いなあと思いました。
荻原作品は、「母恋旅烏」以来ですが、どちらかというと「母恋旅烏」のような、もうちょっと笑える要素のある作品の方が好きかもです。
先に読まないといけない本があったのですが、「予約が殺到しています」シールが光っておりますので、こちらを優先しました。
山本 甲士 「俺は駄目じゃない」
本文の前に作者の言葉が「はじめに」としてあり、どんな内容の話かがわかります。
そのせいなのか、若干、胡散臭さがその内でてくるのかもと思いながら読み始めましたが、心配したようなことはなく、ラストはなるほどそうきたか、と納得もし、素直に読んで十分楽しめる作品です。
ブログに寄せられるコメントを軸として展開していくのですが、そこまで上手くはいかないだろうと思いつつも、心のひねくれた人物がいないので、楽しく読めます。
ある意味、警察を外側からちくちくと突く話でもあり、面白かったです。
なんやねん、このタイトル、と思いながら手に取った本でしたが、全く期待していなかったこともあり、お得感がありました(笑)
本文の前に作者の言葉が「はじめに」としてあり、どんな内容の話かがわかります。
そのせいなのか、若干、胡散臭さがその内でてくるのかもと思いながら読み始めましたが、心配したようなことはなく、ラストはなるほどそうきたか、と納得もし、素直に読んで十分楽しめる作品です。
ブログに寄せられるコメントを軸として展開していくのですが、そこまで上手くはいかないだろうと思いつつも、心のひねくれた人物がいないので、楽しく読めます。
ある意味、警察を外側からちくちくと突く話でもあり、面白かったです。
なんやねん、このタイトル、と思いながら手に取った本でしたが、全く期待していなかったこともあり、お得感がありました(笑)
中路 啓太 「もののふ莫迦」
「豊臣に故郷・肥後を踏みにじられた軍人・岡本越後守と、豊臣に忠節を尽くす猛将・加藤清正が、朝鮮の戦場で激突する!「本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞作。
勝者こそが正義と断じ、負けた肥後を見下し、中央の常識を押し付けてくる清正。これに対し越後守は、自分が敗北する可能性もあるのだから、弱者や敗者にも情けをかけるのがもののふ(武士)の道だと主張する。」
久しぶりに分厚い本(470ページ)を読みました。
受け取ってぎょえっ!となり、読めるのかどうか不安になりましたが、何とか読破。
越後守と清正と、あくまでも自分の生き方を貫こうとする二人の戦いぶりは面白かったです。
ただの意地っ張りやん、なんて思うのは、自分が現代に生きているからでしょうか。
貫こうとすることで回りにかけてしまう迷惑、そんなことにも悩む姿も心に残りました。
そこへもってきて、あっちへついたりこっちへついたりして生き延び、年老いてやっと自分も莫迦になる決心をした粂吉の姿に、うんうんと頷きたくもなりました。
たけについては、その姿形なんかについてもやや書きすぎなんじゃ?と思ったこともあったのですが、存在感は十分でした。
後半は朝鮮出兵の話を中心に進みます。
時代小説を読むたびに思うのは、武士って何だったんだろうなということです。
今回は、朝鮮出兵って何だったんだろうな、とも強く思いました。
「豊臣に故郷・肥後を踏みにじられた軍人・岡本越後守と、豊臣に忠節を尽くす猛将・加藤清正が、朝鮮の戦場で激突する!「本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞作。
勝者こそが正義と断じ、負けた肥後を見下し、中央の常識を押し付けてくる清正。これに対し越後守は、自分が敗北する可能性もあるのだから、弱者や敗者にも情けをかけるのがもののふ(武士)の道だと主張する。」
久しぶりに分厚い本(470ページ)を読みました。
受け取ってぎょえっ!となり、読めるのかどうか不安になりましたが、何とか読破。
越後守と清正と、あくまでも自分の生き方を貫こうとする二人の戦いぶりは面白かったです。
ただの意地っ張りやん、なんて思うのは、自分が現代に生きているからでしょうか。
貫こうとすることで回りにかけてしまう迷惑、そんなことにも悩む姿も心に残りました。
そこへもってきて、あっちへついたりこっちへついたりして生き延び、年老いてやっと自分も莫迦になる決心をした粂吉の姿に、うんうんと頷きたくもなりました。
たけについては、その姿形なんかについてもやや書きすぎなんじゃ?と思ったこともあったのですが、存在感は十分でした。
後半は朝鮮出兵の話を中心に進みます。
時代小説を読むたびに思うのは、武士って何だったんだろうなということです。
今回は、朝鮮出兵って何だったんだろうな、とも強く思いました。
桂 望実 「嫌な女」
ブログで紹介されていた作品です。
初対面の相手でも、するりとその懐に入り、詐欺行為を繰り返す夏子。
夏子の遠戚で、新米弁護士の徹子。
タイトルはも一つだなと思いましたが、読み終えてなるほど、じわっとくる面白さでした。
何年かおきに、トラブルを何とかしろと連絡してくる夏子。
物語は、そのつど付き合わされる、少しずつ弁護士としての経験を積んだ徹子の視線から書かれています。
不器用で、いつも虚しさを抱えた毎日。
成績優秀で合格したのに、弁護士と言っても、そこらへんにいくらでも転がっているような些細な事への対処といった内容の仕事が主。
でも、淡々とそれをこなしていくことこそが大事なのだと気が付いていきます。
荻原弁護士事務所の小ささがよかったです。
だんだん年を取っていき、新米だった徹子も終盤には70才を過ぎていくのですが、年代が自分と近いこともあるせいか、読み進めるにつれ、作品が自分に近づいてくる感じがありました。
夏子の「人生で楽しかった出来事ランキング」、これは面白いと思いました。
終盤もよかったです。
====================================
図書館へ行った時、予約本は確か二冊あったと思っていたのに、行ったら1冊しかありませんでした。
もう一冊は多分、受け取り期間内を過ぎてしまったのだろうと思います。
それで、もう一回その本を予約しようと思ったのですが、いくら考えてもタイトルが思い出せない。
気になって仕方ないです。
ひょいと図書館に立ち寄った時の為に、紹介されている本を時々スマホで撮っておくんですが、
読むのが追いつかない間にどんどん他の画像が増えてしまい、しばらくしてからその画像を探そうと思っても、はるか彼方になってしまって探すのに苦労しております。
ブログで紹介されていた作品です。
初対面の相手でも、するりとその懐に入り、詐欺行為を繰り返す夏子。
夏子の遠戚で、新米弁護士の徹子。
タイトルはも一つだなと思いましたが、読み終えてなるほど、じわっとくる面白さでした。
何年かおきに、トラブルを何とかしろと連絡してくる夏子。
物語は、そのつど付き合わされる、少しずつ弁護士としての経験を積んだ徹子の視線から書かれています。
不器用で、いつも虚しさを抱えた毎日。
成績優秀で合格したのに、弁護士と言っても、そこらへんにいくらでも転がっているような些細な事への対処といった内容の仕事が主。
でも、淡々とそれをこなしていくことこそが大事なのだと気が付いていきます。
荻原弁護士事務所の小ささがよかったです。
だんだん年を取っていき、新米だった徹子も終盤には70才を過ぎていくのですが、年代が自分と近いこともあるせいか、読み進めるにつれ、作品が自分に近づいてくる感じがありました。
夏子の「人生で楽しかった出来事ランキング」、これは面白いと思いました。
終盤もよかったです。
====================================
図書館へ行った時、予約本は確か二冊あったと思っていたのに、行ったら1冊しかありませんでした。
もう一冊は多分、受け取り期間内を過ぎてしまったのだろうと思います。
それで、もう一回その本を予約しようと思ったのですが、いくら考えてもタイトルが思い出せない。
気になって仕方ないです。
ひょいと図書館に立ち寄った時の為に、紹介されている本を時々スマホで撮っておくんですが、
読むのが追いつかない間にどんどん他の画像が増えてしまい、しばらくしてからその画像を探そうと思っても、はるか彼方になってしまって探すのに苦労しております。
「スーツケースの半分は」を読んですっかりファンになってしまった近藤史恵さんの作品を選びました。
近藤 史恵 「サクリファイス」
面白かったです。
「サクリファイス」は何ていう意味だったかなあと思いつつ、思い出せないままに読んだのですが、それでよかったです。
知っていたら、また感動も違ったかもしれません。
自転車のロードレースの話で、私はどんな競技なのか全く知らずに読みましたが、すごい世界だなあと少しわかるようになり、ちょっと見に行って見たいなあと思いました。
下りで時速70キロとか80キロとか書いてあるのを見たら、もうそれだけで恐怖心マックスになって、決してやってみたいとは思いませんでしたが。
読んでいる内に、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を思い出し、あれも面白かったよなあと浸ったりもしました。(この時は、走ってみたいと思いました)
1ページ目で、えっ、何?と思わされ、その後も何となく地味と言うか、楽しい、スカッとする、という雰囲気ではないのにぐんぐん引き込まれ、驚きのラストでは、そこまでするか、とは思ったのですが、その思いの深さには唸るものもあったし、主人公の白石がそれをきちんと受け止めていたし、一気に読むことができました。
近藤 史恵 「サクリファイス」
面白かったです。
「サクリファイス」は何ていう意味だったかなあと思いつつ、思い出せないままに読んだのですが、それでよかったです。
知っていたら、また感動も違ったかもしれません。
自転車のロードレースの話で、私はどんな競技なのか全く知らずに読みましたが、すごい世界だなあと少しわかるようになり、ちょっと見に行って見たいなあと思いました。
下りで時速70キロとか80キロとか書いてあるのを見たら、もうそれだけで恐怖心マックスになって、決してやってみたいとは思いませんでしたが。
読んでいる内に、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を思い出し、あれも面白かったよなあと浸ったりもしました。(この時は、走ってみたいと思いました)
1ページ目で、えっ、何?と思わされ、その後も何となく地味と言うか、楽しい、スカッとする、という雰囲気ではないのにぐんぐん引き込まれ、驚きのラストでは、そこまでするか、とは思ったのですが、その思いの深さには唸るものもあったし、主人公の白石がそれをきちんと受け止めていたし、一気に読むことができました。
青山 文平 「遠縁の女」
中編が3作品。
表題作は3つ目で、他に、「機織る武家」「沼尻新田」。
一番いいなと思ったのは「沼尻新田」です。
3作品とも、わざと結末を読者の予想からずらそうとしているような感じなのですが、私には、「遠縁の女」のそれは予想通りというか、タイトルからしても十分予想はできたし、何より、武者修行の話が面白かったので、その続きが読みたかったなという感じです。
ラストの4行「・・・大事なものをひとつだけにして、あとは、いいかげんにやることだ。・・・(続)」の部分では、あっ、そうですか、でした。
「機織る武家」の話も、機織りのことを色々と興味深く読み進めることができたのに、その終わり方は違うかなあという気がしました。
「沼尻新田」も、結局はそういうことなのだというのは、読み終えるまでもなくわかるんですが、「藩校出」についての父の考え、息子の考えも、新田開発の経緯の話も、「すみ」との出会いもよかったし、個人的に好きでした。
「遠縁の女」と比べてこちらの方が好みだと思うのは、私自身が、「妖艶」というのからは程遠いからでしょう。
中編が3作品。
表題作は3つ目で、他に、「機織る武家」「沼尻新田」。
一番いいなと思ったのは「沼尻新田」です。
3作品とも、わざと結末を読者の予想からずらそうとしているような感じなのですが、私には、「遠縁の女」のそれは予想通りというか、タイトルからしても十分予想はできたし、何より、武者修行の話が面白かったので、その続きが読みたかったなという感じです。
ラストの4行「・・・大事なものをひとつだけにして、あとは、いいかげんにやることだ。・・・(続)」の部分では、あっ、そうですか、でした。
「機織る武家」の話も、機織りのことを色々と興味深く読み進めることができたのに、その終わり方は違うかなあという気がしました。
「沼尻新田」も、結局はそういうことなのだというのは、読み終えるまでもなくわかるんですが、「藩校出」についての父の考え、息子の考えも、新田開発の経緯の話も、「すみ」との出会いもよかったし、個人的に好きでした。
「遠縁の女」と比べてこちらの方が好みだと思うのは、私自身が、「妖艶」というのからは程遠いからでしょう。
中村 文則 「土の中の子供」
「27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。理不尽に引き込まれる被虐体験に、生との健全な距離をっ見失った「私」は、自身の半生を呪い持てあましながらも、暴力に乱された精神の暗部にかすかな生の核心をさぐる。人間の業と希望を正面から追求し、賞賛を集めた新生代の芥川賞受賞作」
作中に「極度の空腹に激しい腹痛が伴うこと・・」というのがあって唸りました。
体験がないと知りえない事だと思います。
さらに描かれていたとんでもない虐待は・・・
「土の中の子供」というタイトルがぐんと重みを持ってきます。
主人公なりの抵抗を繰り返しながら、生への意志と言っていいのか、虐待され続けた主人公がそういったものを微かに自分の中に見つけていくきつさを改めて考えさせられました。
「27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。理不尽に引き込まれる被虐体験に、生との健全な距離をっ見失った「私」は、自身の半生を呪い持てあましながらも、暴力に乱された精神の暗部にかすかな生の核心をさぐる。人間の業と希望を正面から追求し、賞賛を集めた新生代の芥川賞受賞作」
作中に「極度の空腹に激しい腹痛が伴うこと・・」というのがあって唸りました。
体験がないと知りえない事だと思います。
さらに描かれていたとんでもない虐待は・・・
「土の中の子供」というタイトルがぐんと重みを持ってきます。
主人公なりの抵抗を繰り返しながら、生への意志と言っていいのか、虐待され続けた主人公がそういったものを微かに自分の中に見つけていくきつさを改めて考えさせられました。
津村 記久子 「浮遊霊フラジル」
評判が良いようなので読んでみました。
短編集でした。
中でも「地獄」と「浮遊霊ブラジル」が好きという投稿が結構目立っていて、内容は視点が変わっていて、例えば「浮遊霊ブラジル」は、成仏できない霊がする冒険?のような話で、ラストもふむふむとなかなか面白かったのですが、私としては、そんなめちゃ入り込めるというほどでなかったのは、半分昼寝しながら、毎日昼休みに読んでいたからだと思います。
寝てるのに電話とかかかってきて昼寝の邪魔をされて、折角寝てたのに目が覚めたやんか、とか思いながら再び読み始めたりとかしたので、多分、ちゃんと読書のモードになっていなかったからだと。
津村作品と言って思いだすのは、「アレグリアとは仕事はできない」。
これは好きでした。
そう思いだしてこの作品を振り返ってみると、ふむふむ、やっぱりなかなか面白かったかもな。
評判が良いようなので読んでみました。
短編集でした。
中でも「地獄」と「浮遊霊ブラジル」が好きという投稿が結構目立っていて、内容は視点が変わっていて、例えば「浮遊霊ブラジル」は、成仏できない霊がする冒険?のような話で、ラストもふむふむとなかなか面白かったのですが、私としては、そんなめちゃ入り込めるというほどでなかったのは、半分昼寝しながら、毎日昼休みに読んでいたからだと思います。
寝てるのに電話とかかかってきて昼寝の邪魔をされて、折角寝てたのに目が覚めたやんか、とか思いながら再び読み始めたりとかしたので、多分、ちゃんと読書のモードになっていなかったからだと。
津村作品と言って思いだすのは、「アレグリアとは仕事はできない」。
これは好きでした。
そう思いだしてこの作品を振り返ってみると、ふむふむ、やっぱりなかなか面白かったかもな。