葉室 麟 「乾山晩愁」
「乾山晩愁」を含む連作。
乾山とは尾形乾山のことで、尾形光琳の弟。
「兄、尾形光琳のはなやかな存在感に比べれば、 弟の乾山は、はるかにかすんだ印象がある。
そこに魅かれた。」(作者あとがき)
尾形光琳はそんなに女好きの人だったのかあ、乾山さんの方がいいかも、なんて思う私は何だ。
狩野永徳、長谷川等伯、清原雪信、英一蝶をそれぞれ主人公にしており、どれも面白かった。
短編だけれど、十分読み応えがありました。
最後の作品で赤穂浪士の話が出てくるんですが、読み終えて、そういえば最初の作品でも赤穂浪士の話が出ていたなと思い出します。
絵師も大変だったんだなあと書くとものすごく平べったいですが、時代の権力者の傍らで生き延びていくことの重さには唸りました。
人間の醜い感情のオンパレード。
絵師としての矜持。
うーむ。。
最近、読書の時間が減っています。。。
「乾山晩愁」を含む連作。
乾山とは尾形乾山のことで、尾形光琳の弟。
「兄、尾形光琳のはなやかな存在感に比べれば、 弟の乾山は、はるかにかすんだ印象がある。
そこに魅かれた。」(作者あとがき)
尾形光琳はそんなに女好きの人だったのかあ、乾山さんの方がいいかも、なんて思う私は何だ。
狩野永徳、長谷川等伯、清原雪信、英一蝶をそれぞれ主人公にしており、どれも面白かった。
短編だけれど、十分読み応えがありました。
最後の作品で赤穂浪士の話が出てくるんですが、読み終えて、そういえば最初の作品でも赤穂浪士の話が出ていたなと思い出します。
絵師も大変だったんだなあと書くとものすごく平べったいですが、時代の権力者の傍らで生き延びていくことの重さには唸りました。
人間の醜い感情のオンパレード。
絵師としての矜持。
うーむ。。
最近、読書の時間が減っています。。。
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熊谷 達也 「 氷結の森」
「日露戦争に従軍した猟師の矢一郎は故郷を離れ、樺太で過去を背負い流浪の生活を続けていた。そんな彼を探し回る男が一人。矢一郎の死んだ妻の弟、辰治だ。執拗に追われ矢一郎はついに国境を越える。樺太から氷結の間宮海峡を越え革命に揺れる極東ロシアへ。時代の波に翻弄されながらも過酷な運命に立ち向かう男を描く長編冒険小説。直木賞・山本賞ダブル受賞の『邂逅の森』に連なる“森”三部作完結編。」
マタギ三部作の最後の一冊をやっと手にしてみました。
「邂逅の森」を読んだのはもう大分前で、とにかく面白かったという印象が強烈でしたが、この作品も、冒頭の鰊漁からぐっと引き込まれました。
久しぶりに、本を読んだな、という感じ。
満足。
時代背景は日露戦争の後のシベリア出兵から尼港事件あたり。
中国人の孫、善助なども個性的で、怖くて不気味で、決して気を許せないからこそその圧倒的な存在感がずしっときます。
それにしても、氷点下40度の世界を思うと、自分の苦しさなんてなんとちっぽけなことかと、ありきたりですがやっぱりそんなことを思い知らされました。
「日露戦争に従軍した猟師の矢一郎は故郷を離れ、樺太で過去を背負い流浪の生活を続けていた。そんな彼を探し回る男が一人。矢一郎の死んだ妻の弟、辰治だ。執拗に追われ矢一郎はついに国境を越える。樺太から氷結の間宮海峡を越え革命に揺れる極東ロシアへ。時代の波に翻弄されながらも過酷な運命に立ち向かう男を描く長編冒険小説。直木賞・山本賞ダブル受賞の『邂逅の森』に連なる“森”三部作完結編。」
マタギ三部作の最後の一冊をやっと手にしてみました。
「邂逅の森」を読んだのはもう大分前で、とにかく面白かったという印象が強烈でしたが、この作品も、冒頭の鰊漁からぐっと引き込まれました。
久しぶりに、本を読んだな、という感じ。
満足。
時代背景は日露戦争の後のシベリア出兵から尼港事件あたり。
中国人の孫、善助なども個性的で、怖くて不気味で、決して気を許せないからこそその圧倒的な存在感がずしっときます。
それにしても、氷点下40度の世界を思うと、自分の苦しさなんてなんとちっぽけなことかと、ありきたりですがやっぱりそんなことを思い知らされました。
奥田 英朗 「邪魔」上・下
「九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として、所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚・花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長・及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。」
三つの話が同時に進んでいくのですが、下巻に入ったあたりから面白くなってきました。
及川の妻の恭子が、パートの待遇の件である団体に関わっていくことになり、その後のその団体との決裂なんかはなるほどと思いましたが、夫への疑念からどんどん落ちていく様はちょっと異様でもあって、うーん、でした。
義母の話とかも、そういうことかとは思うものの、ちょっとわかりにくかったし、面白かったのに何かラストが・・という感が少しありました。
お決まりですが、「もはや幹部たちは真実に関心がない。誰の顔を立てるかが彼らの問題なのだ」という部分に関連するあたりは面白かったです。
「九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として、所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚・花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長・及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。」
三つの話が同時に進んでいくのですが、下巻に入ったあたりから面白くなってきました。
及川の妻の恭子が、パートの待遇の件である団体に関わっていくことになり、その後のその団体との決裂なんかはなるほどと思いましたが、夫への疑念からどんどん落ちていく様はちょっと異様でもあって、うーん、でした。
義母の話とかも、そういうことかとは思うものの、ちょっとわかりにくかったし、面白かったのに何かラストが・・という感が少しありました。
お決まりですが、「もはや幹部たちは真実に関心がない。誰の顔を立てるかが彼らの問題なのだ」という部分に関連するあたりは面白かったです。
川瀬 七緒 「水底の刺」 法医昆虫学捜査官
シリーズもので、これが3冊目の作品だそうですが、私が読むのはこれで2冊目です。
前に読んだのは確かシリーズの1冊目で、それもとても面白かったのを覚えています。
法医昆虫学者の赤堀涼子が、法医昆虫学の専門知識を駆使して捜査、通常の刑事とは異なる視点で真相へと向かっていくのですが、それが面白い面白い。
知らないことがいっぱい書いてあって、こういう作品を読むと、色々な視点から物事を見ていくことの大切さを痛感します。
だんだん核心に近づいてきたあたりで出てきた生き物を、途中でネットで検索してみました。
ウミケムシ
ウオノエ
トラフシャコ
ぎょえっ!と思うのもありましたが、それより、検索している内に見つけたブログか何かで、たとえば「ウミケムシを食べてみた」なんてのが書いてあるのがあって、そっちの方がぎょえっ!でしたワ。
それにしても、いろんな生き物いるんですね。
うじがどうのこうの、とか書いてある箇所もたくさんあるんですけど、そういうのはあんまり想像しないように、ひたすら文字を追うだけにして読んでいきました。
シリーズもので、これが3冊目の作品だそうですが、私が読むのはこれで2冊目です。
前に読んだのは確かシリーズの1冊目で、それもとても面白かったのを覚えています。
法医昆虫学者の赤堀涼子が、法医昆虫学の専門知識を駆使して捜査、通常の刑事とは異なる視点で真相へと向かっていくのですが、それが面白い面白い。
知らないことがいっぱい書いてあって、こういう作品を読むと、色々な視点から物事を見ていくことの大切さを痛感します。
だんだん核心に近づいてきたあたりで出てきた生き物を、途中でネットで検索してみました。
ウミケムシ
ウオノエ
トラフシャコ
ぎょえっ!と思うのもありましたが、それより、検索している内に見つけたブログか何かで、たとえば「ウミケムシを食べてみた」なんてのが書いてあるのがあって、そっちの方がぎょえっ!でしたワ。
それにしても、いろんな生き物いるんですね。
うじがどうのこうの、とか書いてある箇所もたくさんあるんですけど、そういうのはあんまり想像しないように、ひたすら文字を追うだけにして読んでいきました。
池澤 夏樹 「アトミック・ボックス」
『「逃げようと美汐は思った」、ここから高松にある国立大の社会学講師・宮本美汐の逃走行は始まった。彼女には父親殺しの嫌疑がかけられている。全国に指名手配され、公共交通機関はすべて使えない。狭い日本、容疑者が逃げ回るには圧倒的に不利だ。しかし、彼女は持ち前の勇気と知性と美貌(?)とで、瀬戸内の島々と、洋上遙(はる)かに東京まで、友人たち、知人たちの助けを借りて、逃げおおせることに成功したのだ。。。』
面白かったです。
どうやって逃げる?んだろうと、スリル満点で、ドキドキしながら読みました。
美汐がとても魅力的。
逃げるシーンがとても長いんですが、そこがよくって一気に読めます。
ラストで明らかになった”隠されていた事実”には、ビックリどころじゃありませんでした。
ほんとに有り得たんではないかと思える内容で、怖さと面白さが一気に加速しました。
でも、さらにその後で繰り広げられる美汐と大手のやりとりというか、一種の戦い、この部分も読み応えがあり、とても考えさせられます。
直後の大手の死についての微かな疑問にも頷けました。
美汐の父が東京での仕事をやめて故郷に帰ってきてから友人と交わす会話、美汐と友達との会話、警察に応える新聞記者の竹西の受け答えとか彼の読んでいた本の題名など(←この題名をわざわざ書いているのだから余計に面白かった)、こういった部分で個人的に私の笑いのツボにハマり、読んでよかったなーと。
今年最後の本になりますが、これは、来年の1冊目にカウントしようと思います。
皆様、よいお年をお迎えください。
『「逃げようと美汐は思った」、ここから高松にある国立大の社会学講師・宮本美汐の逃走行は始まった。彼女には父親殺しの嫌疑がかけられている。全国に指名手配され、公共交通機関はすべて使えない。狭い日本、容疑者が逃げ回るには圧倒的に不利だ。しかし、彼女は持ち前の勇気と知性と美貌(?)とで、瀬戸内の島々と、洋上遙(はる)かに東京まで、友人たち、知人たちの助けを借りて、逃げおおせることに成功したのだ。。。』
面白かったです。
どうやって逃げる?んだろうと、スリル満点で、ドキドキしながら読みました。
美汐がとても魅力的。
逃げるシーンがとても長いんですが、そこがよくって一気に読めます。
ラストで明らかになった”隠されていた事実”には、ビックリどころじゃありませんでした。
ほんとに有り得たんではないかと思える内容で、怖さと面白さが一気に加速しました。
でも、さらにその後で繰り広げられる美汐と大手のやりとりというか、一種の戦い、この部分も読み応えがあり、とても考えさせられます。
直後の大手の死についての微かな疑問にも頷けました。
美汐の父が東京での仕事をやめて故郷に帰ってきてから友人と交わす会話、美汐と友達との会話、警察に応える新聞記者の竹西の受け答えとか彼の読んでいた本の題名など(←この題名をわざわざ書いているのだから余計に面白かった)、こういった部分で個人的に私の笑いのツボにハマり、読んでよかったなーと。
今年最後の本になりますが、これは、来年の1冊目にカウントしようと思います。
皆様、よいお年をお迎えください。
近藤 史恵 「タルトタタンの夢」
ビストロ「パ・マル」は、家庭料理のようなフランス料理をだす小ぶりなお店。
そこでの様々な出来事が、7つのお話で紹介されています。
読んでもどんなお料理なのかさっぱりわからないのですが、そのお料理が美味しそうで。
ホットワインの「ヴァン・ショー」も何度も出てきて、アルコールさっぱりな私も、何度も飲んでみたくなりました。
お客さんの話に出てくる食べ物や料理の話を聞いていてシェフが疑問を解決していきます。
お料理の世界って深いなあとしみじみ思いました。
軽く読める作品でした。
さて、図書館で本を借りてくるのは今年はこれでやめようと思います。
個人的に借りてあるのもあるので、それを読もうかなあと。
2017年に借りた本は、全部でたったの63冊でした(含児童文学、読破できなかった本)
友人から、今年のベスト1は「蜜蜂と遠雷」と聞き、私はそれをまだ読んでいないので、早く順番が回ってきてほしいと思う来年です。
ビストロ「パ・マル」は、家庭料理のようなフランス料理をだす小ぶりなお店。
そこでの様々な出来事が、7つのお話で紹介されています。
読んでもどんなお料理なのかさっぱりわからないのですが、そのお料理が美味しそうで。
ホットワインの「ヴァン・ショー」も何度も出てきて、アルコールさっぱりな私も、何度も飲んでみたくなりました。
お客さんの話に出てくる食べ物や料理の話を聞いていてシェフが疑問を解決していきます。
お料理の世界って深いなあとしみじみ思いました。
軽く読める作品でした。
さて、図書館で本を借りてくるのは今年はこれでやめようと思います。
個人的に借りてあるのもあるので、それを読もうかなあと。
2017年に借りた本は、全部でたったの63冊でした(含児童文学、読破できなかった本)
友人から、今年のベスト1は「蜜蜂と遠雷」と聞き、私はそれをまだ読んでいないので、早く順番が回ってきてほしいと思う来年です。
塩田 武士 「盤上のアルファ」
予約かごに入れてまだ読んでいない「罪の声」の作者の作品でした。
羽生善治さんの史上初の「永世七冠」のニュースで賑わっている最中、プロ棋士を目指す真田とふてくされた新聞記者の秋葉の出てくるこの作品に出会いました。
この作品も面白かったです。
最後の勝負で、相手が、圧倒的有利という先入観から万に一つの負けを手繰り寄せてしまった部分、緊張感がビシビシ伝わってきて、将棋のことはさっぱりわからないのに、やったな!真田!と身体に力が入ってしまいました。
残酷な現実もあり、関西人ならではのお笑いもあり、ラストには泣かせるシーンもあり、印象に残りました。
この本、手に取した時は、その表紙絵にうーむ、と思うものがあったのですが、読み終えてしみじみ見たら、、、やっぱりうーむ、でしたが、思いが大分変わりました。
予約かごに入れてまだ読んでいない「罪の声」の作者の作品でした。
羽生善治さんの史上初の「永世七冠」のニュースで賑わっている最中、プロ棋士を目指す真田とふてくされた新聞記者の秋葉の出てくるこの作品に出会いました。
この作品も面白かったです。
最後の勝負で、相手が、圧倒的有利という先入観から万に一つの負けを手繰り寄せてしまった部分、緊張感がビシビシ伝わってきて、将棋のことはさっぱりわからないのに、やったな!真田!と身体に力が入ってしまいました。
残酷な現実もあり、関西人ならではのお笑いもあり、ラストには泣かせるシーンもあり、印象に残りました。
この本、手に取した時は、その表紙絵にうーむ、と思うものがあったのですが、読み終えてしみじみ見たら、、、やっぱりうーむ、でしたが、思いが大分変わりました。