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なんやかんや
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小野寺 史宣 「近いはずの人」

友達と温泉に行くと言って出かけた妻の乗っていたタクシーが谷に転落、妻、事故死。
こんなところから物語は始まります。
死んだ妻の携帯は無事でしたが、ロックがかかっており、主人公の俊英は、0000から始まる4桁の数字を一日50個ずつ順に入力し続け、「端末暗証番号が違います」と確認する毎日。
その毎日が突然終わり、今まで知らなかったことを知ることに。

俊英が妻の絵美とその両親と4人で近くのスーパーに買い物に行った時のことを思い出した部分。
「そしてスーパーで買い物を済ませてから。使ったカートを所定の位置に戻さず、戻そうとした絵美に、そのために警備員がいるんだからいいんだよ、と勇さん(義父のこと)が言った時。やはりこの人はちょと苦手だな、と思った。思ってしまった。」
こういう感覚、私もそんな風に感じるタイプです。
ですが、だからと言って、私は俊英のような人を好きになるかというと、それはわからないなとも思いました。
絵美のことを知った時は、それは嫌とハッキリ思いました。
だとしたら、私はこの夫婦のこと、どちらともそれほど好きではないことになるかなと思いました、思ってしまいました。
後輩の福田とか、俊英の弟とかの存在がよく、こんな感じの人は今まで読んだ作品の中にも出てきたし、ちょっとした清涼剤でもありました。
だからかなあ、やっぱり他の作品も読んでみたいなあと。







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米澤 穂信 「Iの悲劇」

わたくし、「Yの悲劇」とか「Xの悲劇」とか、読んだのかどうか、多分読んでないような気がするのですが、それにも関わらずその印象があったので、これもそういった作品かなあと思っていたら、全然違いました。
「六年前に滅びた簑石に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。彼らが向き合うことになったのは、一癖ある「移住者」たちと、彼らの間で次々と発生する「謎」だった――。」
という内容で、色々なことがあって、せっかく集まった移住者が次々移住をやめていくことになる過程が、それぞれの章で明らかになっていきます。
いくつかの章からなっているんですが、一つ目を読み終えたところで、悲劇なんだけれど、ある意味喜劇だな、と思いながら読み進めました。
で、最後の章になり、その時、その章の題をたまたまちゃんと読んでいなかったのですが、読み終えてから改めて見直したら「Iの喜劇」となっている。
そうか。
そういうことか。
悲劇なのか、喜劇なのか、やっぱりこれは悲劇なのか。
何とも言えない思いが最後に広がって、妙に印象に残りました。


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原 宏一 「ねじれびと」

五つの短編からなる作品。
タイトル通り、ねじれた話ばかりで、予想通り、私の好みでした。
どれもありそうでなさそうな話ばかり。
一つ目の「平凡組合」の発想なんか、なかなかすごいと思いました。
この話のラストへの持って行き方の怖いこと。
冒頭は面白く、かなり笑って読んでいたのですが、ただ、この話で女性の私が笑っていいものかどうかとちょっとだけ悩みました。
そんなこんなで、はじめの4つはなかなか怖かったのですが、最後の一つは、逆バージョンのねじれ方。
これを最後にもってきているところに、原さんの人柄を見る思いもし、よかったです。



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芦沢 央 「カインは言わなかった」

これまた強烈な作品でした。
バレエの話、ではあるのですが、色々な関係者が登場して、章毎にそれぞれの視点で話が進んでいき、ラストにつながっていきます。

「世界のホンダ」と崇められるカリスマ芸術監督率いるダンスカンパニー。その新作公演三日前に、主役が消えた。壮絶なしごきにも喰らいつき、すべてを舞台に捧げてきた男にいったい何があったのか。“神”に選ばれ、己の限界を突破したいと願う表現者たちのとめどなき渇望。その陰で踏みにじられてきた人間の声なき声……。様々な思いが錯綜し、激情はついに刃となって振るわれる。」

この誉田の存在感が半端ない。
でもって、芸術って何なんだろうと考えずにはいられません。
突然いなくなった誠に代わり、誉田に徹底的にしごかれる和馬。
その凄まじさ。
なんとしても食らいつきたい和馬はどうなるのかがずっと気になるのですが、終盤にきて驚きの展開。
和馬がしごかれていた事実の理由を知った時、唖然となります。
誉田、こわい、、 なんや、、こいつ、、、みたいな。
ですが、ラストまで読んだ時、少し救われるのです。
作品の締めくくり方もすごいなあと驚きでした。
ただ、誠の弟の豪とモデルの関係のあれこれについてはちょっとよくわからなくなってしまい、気にはなったのですが振り返るのもしんどかったので、まっいいかと読み終えてしまいました。


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森沢 明夫   「夏美のホタル」

いい作品でした。
泣けました。

写真学科の学生の慎吾は、彼女の夏美のバイクに乗せてもらってドライブに行き、山の中の「たけ屋」に住むヤスばあちゃんと地蔵さん(あだ名)に出会います。
地蔵さんは60才過ぎ、ヤスばあちゃんは80才を超えた親子。
この「たけ屋」の離れで、二人はひと夏を過ごすことになります。

地蔵さん(半身が不自由)に教えられ、川で色々な’獲物’を捕まえるところ、それをヤスばあちゃんに料理してもらって食べるところ、まだ土から出ていないタケノコの最高の食べ方など、読んでるだけで「たまらん!」状態でした。
(「ひかりの魔女」のイワシのぬかみそ炊きも頭をよぎりました)
蛍を見るシーンも素晴らしかったです。
後半は、地蔵さんの人生に関わっていくことになります。
地蔵さんはなぜ離婚したのか。。

地蔵さんは「~~~だよぅ」こんな感じで話すのですが、それが心にしみてしみて、最後まで優しい気持ちに包まれました。
よかったです。






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平野 啓一郎 「ある男」

「幼い次男を病気でなくし、夫と別れた里枝が、実家の宮崎で出会った大祐と再婚。しかし、不慮の事故で大祐は死んでしまい、ほんの数年で再び悲しみの中に放り込まれる。しかもその夫は、それまで彼自身が名乗っていた「谷口大祐」とは全くの別人だということがわかり・・・」

読み終えて、表紙絵をまじまじと見た。
過去を捨てずには生きられない現実。
他人の過去を自分のものとし、それを人に語る。
相手から帰ってくる言葉は、自分の中の他人へのものだ。
それでも、愛に辿り着くことができ、その方が幸せなのだとしたら。
血のつながっていない、里枝の長男にも心から慕われた。
他人の名前であり、他人の過去であっても、今、一刻一刻は自分なのだ。
深く考えさせられた作品だった。

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山本 甲士 「ひかりの魔女」

楽しい作品でした。
一番の感想は、「このおばあちゃんの作ったイワシのぬかみそ炊きを食べたい!」です。
主人公は、浪人生の光一。
この光一の家でおばあちゃんが一緒に住むことになったところから話は始まります。
おばあちゃんは小さな嘘をつくのがうまい。
ごはんを焚くのもうまい。
おばあちゃんが書道教室の先生をしていた時の生徒さんからの慕われようがすごい。
立禅を30分もできる。
(私も立禅やってみようかなと)
85才にもなるおばあちゃんだからいつボケるかもなんていう心配が、遥か彼方までふっとんでしまう光一なのでした。
とにかく、読んでいて最後まで心地よかったです。

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森見 登美彦 「熱帯」

図書館に取りに行ったら、またまた500ページもある分厚い本でした。
これもまた、待っている人がたくさんいる作品らしい。
読み始めは結構面白く、思ったよりサクサク読み進めたので喜んでいたのですが、池内さんが京都に行ってちょっとしてからあたりから段々飽きてきてしまい、第4章、第5章に入ったら、一体どうなるんだと思いつつ、ますますさっぱりわからなくなってしまい、早く読み終えたいと、そんなことばかり思いながら読んでいる始末でした。
こういう本は、「わかる」よりも「感じる」ことの方が大事なんだろうなあ。
私の読み方なんて、なんでまた出てくるねん、佐山、みたいなことばっかり思っているみたいな感じで。
あーしんどかった。
もう読みたくないです(笑)


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砥上 裕將 「線は、僕を描く

「渦」とほぼ同時に読み終えた、久しぶりにぐっと引き込まれた一冊。

「両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、 アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。 なぜか湖山に気にいられ、その場で内弟子にされてしまう霜介。。。。」 
水墨画の世界の話でした。
巨匠・篠田湖山との出会いとか、その孫娘「千瑛」との出会いとか、そういう設定には特に目新しさとはないと思いましたが、水墨画にのめりこんでいく姿の描き方にすごく惹かれました。
読んでいるだけで、繊細な動きのかすかな音まで聞こえてくるかのようでした。
先生の一番弟子の西濱さんの存在感もよかった。
いくら技術を磨いても、それだけではたどり着けない場所。
そこにどうやって霜介は近づいていけるのか、いけないのか。
ラストも予想はつきましたが、それでもなんというか、霜介のことを思い浮かべてみるだけで、こちらまで清々しい気持ちになりました。
作品中でも書かれていましたが、水墨画の世界なんてそれこそカルチャーの世界としか思っていなかったものだから、耳の痛い話でもありましたが、すぐに影響されてしまう私は、俄然、やってみたくなったし、水墨の世界をもっと知りたい!と素直に思いました。
よかったです。




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中山 七里 「秋山善吉工務店」

大分前に紹介されていた本、やっと読みました。
表紙の絵を見ただけでどんな方向かは想像がつきますし、実際、それほど特別な感じがあったわけではありませんでした。
火事で焼け出され、亡くなってしまった夫の両親の家へ身を寄せることになった孫たちとその母親。
3人が3人とも、わりとありきたりな方向で問題になっていくんですが、そこへ善吉さんがさらっと絡んでいきます。
そんな都合よく、怖い人の、しかもお偉いさん?との繋がりもあって一件落着なんてあるかいな、などと思いつつ、それでもやっぱりそこが面白い。
善吉おじいちゃんの出番はあんまりないんですが、ものすごい存在感。
こんな人、周りを見たってどこにもおらん。
あー 一度こういう人に会ってみたい。
だからこそ読むんだな。
楽しかったです。

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