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なんやかんや
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木下 昌輝 「宇喜多の捨て嫁」

「宇喜多の楽土」の前に取り急ぎ読みました。
よかったです。
6つの話があって、表題作は一つ目で、宇喜多直家とその四女、於葉の話です。
緊張感溢れる終盤を読み終え、その余韻に浸っていたら、残りの5つの話で、直家はじめ、それぞれの人物の悲しみ、苦悩がくっきりと描かれていき、どの話にも、ぐっと迫る緊張感があって引き込まれました。
非道にしか見えない行為は、本当に非道であったのか。
妻や娘や舅の思いはどうだったのか。
下剋上の何と悲しいことか、惨いことか、孤独なことか。
五つ目の松之丞の一太刀、これも何とも言えない思いの残る話なんですが、中盤、してやったり、という場面がありました。
270ページの6行目まで読んだ時、思わず私も、直家の家老達と一緒に笑いました。
「宇喜多の楽土」は勿論、その他の作品も是非読んでみようと思います。



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森 絵都 「出会いなおし」

またまた短編集でした。
「どうか、どうか、どうかー。」という言葉で終わるいくつかの話が集まった「テールライト」ではちょっと不安な気持ちになってしまいましたが、その他は、やさしい気持ちになれる作品でした。
2番目の「カブとセロリと塩昆布サラダ」、少し理屈っぽい感じもしたんですが、言いたいことはよくわかったし、読んでいる内に、会社でのよく似た出来事を思い出したりもし、えらく共感できました。
結局自分はどうしたかったのか。
カブのサラダを食べたかったんですね。
それにしても、カブ料理の名前をあげるところ、まるまる1ページ以上使って書くってやりすぎじゃね?
でも、そのあほらしさに大いに笑えたのでOK。
「青空」、今が過ぎれば、と思っている内に、体調不良を訴えてあっという間に逝ってしまった妻の亜弥。
それに対して自責の念を持つ謙一は、妻の気配を感じて、、、息子の恭介との今後にも期待が持ててよかったです。

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澤田 瞳子 「火定」

天然痘の話だし、奈良時代だし、ということで、すさまじい描写もあるだろうと覚悟して読みました。
病の大流行によるパニックで、人々の業が様々な姿をとって出てきます。
子どもたちが無残なことになってしまうところでは、本当にいたたまれなかったです。
施薬院で、今日こそ辞めてやろうと「嫌々」働いている名代の変わっていく姿、天皇の侍医にまでなったのに無実の罪で陥れられ、悲惨な目にあって荒れ果ててしまった諸男の心の変化、そのためにはここまで書かなくてはいけないのね、、と思いました。
そうやんなあ、そんなことできないよなあ、そう言いたくなるのがわかるわあ、と思うような心の描き方も色々ありました。
ラスト、医者としての、人間としての誇りを保って取ろうとする行動は。。
奈良時代であるということも考え合わせると、この決着のつけ方にも、唸りました。


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木内 昇 「茗荷谷の猫」

短編集でした。
作品の数は9つで、表題作は3つ目の話でした。
表題作まで読んで、面白くないわけではないのに、なんかなあ、という感じで、どうしようか迷ってしまい、それならと先に「終わらない歌」を読み、その後、この本の続きを読んだら、5つ目の「隠れる」が、面白かった。
世の中から隠れるために、受け継いだ財産で寂れた町に移り住んだのに。。。
ラストは、ちょっと笑えました。
その後の「庄助さん」「てのひら」なんかもよかったです。
最後の作品「スペインタイルの家」は、文庫本でたったの9ページの話でしたが、「・・・俊男は、自分の仕事の意味を知って、ほんの少し安心する」の部分を読んで、私だってほんの少しでいい、そういう実感を持って生きていきたいよなと思ったのでした。
9つの作品は微妙にリンクしているんですが、それがそれぞれの話の中で重要なことかというと、そうでもなく、ただ、そんなことがあったのだ、そんな人がいたのだという事実をさらっと出してくるだけで、読み終えて、この9つの作品によって、ごく普通の世界の、ある一部分が取り出されているだけなのだという印象で、上手いなあと感じられた一冊でした。

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宮下 奈都 「終わらない歌」

やっと読みました。
「よろこびの歌」に出てきたメンバー(20歳になった)のその後の話。
各々の人生を歩み出したメンバーの、それぞれの心のゆらめきが丁寧に描かれていました。
最後の、玲の話。
ちょっとうまくいきすぎかなと言う気もしましたが、とんとん拍子に話が進むということはよくあることで、千夏と七緒と玲の3人で作り上げていく三角形の、進化しつつある緊張というか、それがビンビン伝わってきて心地よかったです。
舞台の持つ迫力、いいなあ。
どんな声なんだろうなあ。
とても聞きたくなりました。
宮下さんの作品もまだまだ未読が残っていて、頑張らねば。


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荻原 浩 「冷蔵庫を抱きしめて」

ちょっと前に読みました。
適当に借りてきたのが、またまた短編でした。
最近、短編を手にする率がとっても高いような気がします。

「新婚旅行から戻って、はじめて夫との食の嗜好の違いに気づき、しかしなんとか自分の料理を食べさせようと苦悶する中で、摂食障害の症状が出てきてしまう女性を描いた表題作他、DV男ばかり好きになる女性、マスクなしでは人前に出られなくなった男性など、シニカルにクールに、現代人を心の闇から解放する荻原浩の真骨頂。」

借りてきたのは単行本で、その表紙の絵は、私には一見怖かったんですが、とは言え、有る意味、怖いと言えば怖いのですが、ホラーではないです。
今思うと、「世にも奇妙な物語」っぽい気もします。
ちょっとした「病気」になり始めている色々な人が、何とか立ち直りかける、そんな話の集まりです。
表題作よりは、「マスク」とか「それは言わない約束でしょう」とかがいいなと思いました。
「それは言わない約束でしょう」は、知らず知らず本音がポロポロ出てきてピンチに陥る人の話なんですが、ラストのようになれたら、ストレスから解消されそうですね。
一番はじめの「ヒット・アンド・アウェイ」も私の好みで、夫に隠れてボクシングの練習に打ち込む一人の母親は。。。
へっへっへっ・・

それにしても、「オロロ畑でつかまえて」さえもまだ読んでいないので、頑張らねば。

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樋口 有介 「亀と観覧車」

「ホテルの清掃員をしながら夜間高校に通う三代川涼子(みよかわすずこ)は、失職した父親と鬱病の母親とともに、古いアパートで生活保護を受けて暮らしている。同級生の誘いで高級クラブを訪れた涼子は、学園ミステリー作家の南馬(なんま)潤一郎に出逢い、その言動に興味を抱く。翌朝、二日酔いで目覚めた涼子はポケットの名刺と現金に気付き、思いがけない事態に直面する。母親が父親を刺殺し、部屋で平然とテレビを見ていたのだ。。。」

だいぶん前に読みました。
不思議で変な話でした。
好きか嫌いかと言われたら、好きではないけれど嫌いというわけでもない、みたいな感じです。
普通に考えたらどん詰まり状態だろうに、作品そのものにはどん詰まり感は漂っておらず、あるのは、え?だけ、みたいな。
え?
え?
でも、南馬はよかった。
涼子と南馬との出会いも、その後のことも相変わらず変なのに、南馬の存在感がそれらを吹き飛ばしていて、そこが面白かったです。

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殊能 将之  「ハサミ男」

「美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。」

面白かった、というべきか。
最近ものすごく眠く、本を読んでいても寝てしまっていたことがよくありました。
この作品の時もたまに寝てしまっていたので、肝心のハサミ男の正体がわかった時も、これ誰?どこに出てた?という有様で、情けなくなりました。
筆者の狙い通りだと言えばそうなんですが、ほんとに、コロッと騙されて読んでおりました。
それにしても、多重人格を扱っているせいもあってか、最後の方は、喋っているのは誰なのかこんがらがってしまい、えっと、これは誰?これはどっち?ってな感じになってわけがわからなくなり、何度か読みなおしたりもしていたのですが、途中から面倒くさくなってきて、そのまま読み続けました。
堀之内については、振り返れば、75%、とか言ってた時、なんか違和感あるなあと思ったことを思い出したのと、前に読んだ「慟哭」だったと思うのですが、その作品のことを思い出しました。
ラストの終わり方もすごいですね。
怖っ!


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恒川 光太郎  「私はフーイー」

沖縄の離島を舞台にした怪談短編集でした。
大分前に読んでいて、忘れていました。
沖縄の話なので、そのへんを頭に入れながら。
怖いというほどではなくて、一番最後だったか、その一つ手前だったか、そのあたりにあった話が少し心に残ったような記憶が。
多分、表題作だったような。。
さっぱり覚えていません。
相変わらず、ただの記録ですみません。
恒川さんというと、私は「夜市」と、その本に載っていたもう一遍の「風の古道」の魅力から離れることができず、つい比べてしまうので。

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道尾 秀介 「透明カメレオン」

「人を惹きつけてやまない声の持ち主、桐畑恭太郎はラジオのパ-ナリティ。
人々はその声に魅せられ、すばらしい男性像を描いているが、実際の彼は冴えない容姿。
ある日の夜、恭太郎がいつものように訪れる行きつけのバーに、突然、びしょ濡れの女性が現れ、とんでもない事件に発展していく、、、」

この作品、このとんでもない事件を中心に次々にとんでもないことが起こり、たくさんの嘘がちりばめられて進んでいきます。
それはそれで、面白くないこともないのですが、だからと言って、正直、早く続きを読みたいとのめりこむほどでもなかったです。
ですが、驚きのラスト!
いい意味で、思いっ切りやられました。
誰もが抱える弱さ、その弱さと向き合い、それを受け入れて立ち直っていくために恭太郎がしたことは。。

よかったです。




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